「ママ、あのね…昨日の夜ね、うんと夜中にかわいい子が来たんだよ。」おやすみ前のベッドの中で男の子はママにお話する。その子は熊の子、名前は「よるくま」。よるくまは、夜みたいにまっ黒く、胸のお月さまが光ってる。どうやらお母さんを探しに来たらしい。目が覚めたらいなかったから。
ここから男の子とよるくまの夜の冒険が始まる。こんな可愛い子をおいて、どこにいったんだろう。ふたりで、よく行くお店や公園をまわってみるが、お母さんは見つからない。「もしかして、もうとっくに、おうちに帰ったのかもね。」
ところが、おうちに帰ってみてもお母さんはいない。とうとうよるくまの目から夜みたいにまっくらまっ黒の涙がこぼれてきて…。小さな男の子が、大好きなお母さんを探すよるくまのために奮闘する、素敵な夜のファンタジー絵本。
絵本の中で「熊」は、大きく優しく温かい存在だが、現実ではそうはいかない。2025年、日本の熊被害による死傷者は230人。悲惨な情況にもかかわらず、人間の生活圏に現れる熊がどんな生活をしているのか、その実態はほとんど明らかになっていなかった。熊は管理するのも調査するのも非常に難しい動物だから、データが出てこなかったのだ。そして特段何もせず、放置されたままだったのが顕在化し、多くの被害をもたらした。
しかし専門家らが、地道に着実に調査し、要因が少しずつ解明されている。まず、熊の個体数の増加。メスの熊は生まれてから、20年以上繁殖活動に参加している。輪をかけて、山の木の実の豊作と凶作の間隔が短くなり、豊作の年が増えている。豊作の回数が多くなることで、熊が子どもを産める状態になる年が増えているのだ。
さらに豊作の翌年に訪れる凶作が、豊作に慣れた熊を食べ物を求めて人里に出没させた。拍車をかけたのは、人間が植えた果樹。人口減で住まなくなった廃屋。親子の熊なら絶好の住み家だ。果樹の伐採や廃屋の解体などで、熊の出没を減らす対策はできる。しかし専門人材の配置が充分ではなく、過疎化や行政の財政事情などが絡み、長期化しかねない問題となっている。
熊は古代最強の王だった。熊を狩り肉を食べ、骨を祭ることで人間は信仰の対象にした。世界に伝わる「熊まつり」は、アフリカで誕生し絶滅危惧動物だった人類の祖先が、数万年にもおよぶ長い旅をしてきた証しであろう。子を守ろうとする母熊は外敵に対してさらに狂暴になる。
「我々は生き残るために学習し、活かしてきた。お前たちはどうするのだ」。熊たちの問いかけに、人間は何ができるのか。熊の生態はまだ多くの謎に包まれている。だが少しずつ見えてきたことを、どう活かし被害を抑えられるのか。これからも調査と研究を続けることが重要だ。畏敬の念をもって。
熊を理解し距離を保ち、向き合っていくべきなのであろう。























































