人生を変える、とびきり美味しい物語をご賞味あれ。
その洋菓子店には、お菓子にまつわる魅力的なエッセンスを引き出し、物語としてお客様に届ける「ストーリーテラー」がいる。さまざまな悩みを抱えて店を訪れた人たちは、ストーリーテラーの語る物語と、内気だが腕利きのシェフが作る極上のお菓子に心を解きほぐされていく。
仕事も恋愛もぱっとしない岡野七子がうっとりした「しっとり爽やかな満月のウイークエンド」。家族が最優先で、自分は二の次の牧原ふみよがきらめきを取り戻した「ときめきのシャルロット」。子どものころからシェフが大好きなのに意地悪ばかりする浅見令二を感動させた「毒入りレイヤーケーキ」。初恋を実らせたい三田村麦と令二がつまんだ「こしょうがピリリときいたビスキュイ」。スイーツが大好きだが、内気で悩みがある凌吾とヨシヒサが勇気をもらった「ひんやりジューシーなピーチメルバ」。恋に鈍感な牧原爽馬が麦に差し出した「パリパリキャラメリゼのクイニーアマン」。偽装商品で大儲けしたが告発され、憎しみを抱く大門隆嗣の心を溶かした「ミゼラブル」。
食いしん坊な私が「食べたい!」欲望にかられるほど、スイーツがリアルで美味しそうに描写されている。
「おいしいねえ」の言葉が聞きたくて、私は子どもが小さい頃、よくお菓子を作っていた。材料を型などに入れてオーブンで焼く。漂ってくるバニラやシナモン、カカオやバターの匂いに包まれながら片付けや洗い物をする。私の大好きな「至福の時間」だ。最後にフルーツ、ホイップした生クリーム、アプリコットジャム、チョコクリームなどで仕上げる。
そのお菓子を、あっという間に平らげてしまう子どもを見て「ああ、私と同じ食いしん坊なんだなあ」と思いながらも、ほっこりする。私にとって、かけがえのない思い出のひとつ。
今はお互いに忙しいが「そんなこともあったね」と、いつか話せる日が来るまで、時折美味しいスイーツを食べながら待つことにしよう。





















































