
自民党の両院議員総会で発言する森山幹事長。参院選の総括報告書取りまとめを終え、退任の意向を表明した。左は総裁の石破首相=2日午後、東京・永田町の党本部
◆―― 参院選大敗責任も政策優先 総裁選是非8日集約
自民党の森山裕幹事長ら党四役は2日、参院選大敗の責任を取りそろって退任する意向を示し、進退の判断を総裁である石破茂首相に委ねた。首相にとって政権運営が一層厳しさを増すのは必至だ。一方、首相自身は当面の続投意向を表明した。両院議員総会後、自らの進退について「しかるべき時期に責任を判断するが、まず国民の皆さん方がしてほしいと思っていることに全力を尽くす」と記者団に述べた。物価高を上回る賃金上昇や日米関税交渉など政策課題を優先する。
両院総会では参院選総括の報告書が示された。これを受け、党総裁選挙管理委員会は、総裁選前倒しの是非を巡る意思確認に向けた通達を出した。前倒しを要求する議員に対し、記名、押印した書面を8日に党本部に提出するよう求めた。都道府県連には郵送回答を認める。
首相は、森山氏の処遇に関し「適切な判断をするが、余人をもって代え難い方だ」と答えた。森山氏のほかに首相に進退を委ねた党四役は鈴木俊一総務会長と小野寺五典政調会長、木原誠二選対委員長。役員任期は今月末に満了を迎える。
首相は両院総会で、参院選敗北に関して「総裁である私の責任だ」と述べ陳謝した。党内融和への配慮や少数与党下で「石破らしさを失ってしまった。『何をしたいのか分からない』との批判になった」と振り返った。
進退に関し「地位にしがみつくつもりは全くない。責任から逃れず、しかるべき時にきちんとした決断をする」と語る一方、農業政策や防衛力強化、防災対策を列挙して「道筋を付けなければならない」とも強調した。
約3時間に及んだ両院総会後、首相は記者団に総会での発言の真意を問われ「課題に責任を持って対応することも責任だ。しかるべき時期に責任を判断する」と繰り返した。具体的なめどについては「難しい課題だが、その答えが出るのは早ければ早いほうが国のためだ」とした。
複数の関係者によると、両院総会では、総裁選前倒しの是非を巡り、石破内閣の副大臣や政務官も要求して構わないかどうかを確認する質問が出た。首相は「自由に判断してもらって結構だ」と応じたという。
◆―― けじめ曖昧、許されず
【解説】自民党は参院選大敗の総括報告書に、石破茂首相(党総裁)の責任を明記しなかった。首相は両院議員総会で自らの責任を認め、けじめのつけ方は課題解決の道筋を示した上で決断すると表明。党内の総裁選前倒し要求を抑える狙いとみられるが、当面の続投意向に他ならない。政権延命のための曖昧戦術で混乱を長引かせるのなら、決して許されない。
森山裕幹事長ら党四役は退任意向を示したものの、判断は首相に委ねた。実際に引責辞任となるのかは不透明だ。
報告書は敗因分析で、派閥裏金事件を「不信の底流」と断じる一方、首相が衆院1期生に商品券10万円分を配った問題には触れなかった。首相個人の指導力や発信力の記述もなかった。トップの落ち度からあえて目をそらしたとすれば、総括の名には値しない。
首相は両院総会で、物価高対策や農政改革、防衛力強化などの課題に取り組む必要性を強調した。いずれも一朝一夕には解決できず、進退判断の時期は見通せていない。
衆参両院で少数与党に転落し、政策推進には野党の協力が不可欠だ。しかし参院選後1カ月余り、物価高対策をはじめ野党との政策協議は一向に進展していない。
続投意向の首相を尻目に、自民は総裁選前倒しを巡る党内の意思確認作業を実施する。これ以上、内紛が続けば、党再建どころか有権者の失望が一層広がりかねない。首相も自民議員も、そうした危機感の下に対応すべきではないか。