金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田総裁=30日午後、日銀本店
日銀は30日の金融政策決定会合で、政策金利を現行の0・5%程度で維持し、利上げの見送りを決めた。植田和男総裁は会合後の記者会見で、米国の高関税政策に端を発する海外経済や物価動向に関し「不確実性はなお高い」と理由を挙げ、日本経済に与える影響を見極める姿勢を示した。高市政権発足後初の会合で、日銀内では政府と意思疎通を図るための時間が必要だとの考えも働いたとみられる。
日銀の決定に先立ち、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)は2会合連続で0・25%引き下げた。外国為替市場の円相場は対ドルで下落し、一時1ドル=153円台を付けた。日銀が追加利上げに踏み切らず、日米の金利差がなかなか縮まらないとの観測が強まった。
金利の据え置きは6会合連続。経済と物価の見通しが実現すれば金利を引き上げる方針は堅持した。日銀は企業の賃上げ動向を踏まえて利上げ時期を決める。
会合では前回の9月と同様、田村直樹氏と高田創氏の2人の委員が、物価の上振れリスクなどを理由に政策金利を0・5%程度から0・75%程度に引き上げるよう提案。反対多数で否決された。
日銀は30日、経済や物価の見通しをまとめた「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」も公表した。生鮮食品を除く消費者物価上昇率の2025年度の見通しは、前回7月予想の前年度比2・7%のまま据え置いた。
◆―― 綱渡りの政策運営
【解説】日銀が政策金利の維持を決めた。いまだ目立って表面化しない米国の高関税政策の影響を見極めるとの立場だが、利上げの先送りから外国為替市場で円安ドル高が進み、さらなる物価高騰を招くリスクを抱えた。市場では利上げに消極的な新政権に配慮したとの声もささやかれ、物価安定の使命との板挟みとなり、綱渡りの政策運営が続く。
0・5%程度とする現在の政策金利は世界的には依然として低く、国内外の金利差から円売りを誘ってきた。海外から輸入する石油や食料品などの価格が高止まりし、家計や中小企業の経営を圧迫する構図となっている。
高市早苗首相は過去に利上げをけん制する発言をし、首相になってからも金融を含むマクロ経済政策について「最終的な責任は政府が持つ」と強調した。その一方で、米政府高官からは日銀の利上げを促すとも取れる発信が飛び出した。日銀は中央銀行にとって不可欠な独立性が試される試練に直面している。


































































