
任命式と認証式を終え、写真に納まる高市早苗首相(前列中央)と閣僚ら=21日午後9時7分、宮殿・北車寄
◆―― 初閣議で物価高対策指示 少数与党、保守色鮮明
自民党の高市早苗総裁(64)は21日、衆参両院本会議の首相指名選挙で第104代首相に選出された。女性の首相就任は憲政史上初。皇居での首相任命式と閣僚認証式を経て自民、日本維新の会による連立政権が正式に発足した。高市首相は21日夜、初閣議に臨み、物価高対応を含む経済対策の策定を指示した。これに先立つ記者会見では、今国会でガソリン税の暫定税率廃止法案の成立と、「年収の壁」引き上げに意欲を示した。
連立の枠組みは変更されたが、少数与党に変わりはない。政策実現には野党との交渉が不可欠で、石破政権と同様に多難な政権運営が待ち受ける。閣僚人事では、故安倍晋三元首相が会長を務めた保守系議員連盟「創生日本」から多く起用し、保守色を鮮明にした。
首相は会見で「決断と前進の内閣だ。強い日本経済をつくり上げ、外交・安全保障で日本の国益を守り抜く」と述べた。政治の安定のため野党に協力を呼びかけるとし「基本政策と矛盾しない限り、原則として政策提案を受け入れる方向で前向きに議論する」とした。
首相は24日に衆参両院で所信表明演説を実施したい考え。その後控えるトランプ米大統領の来日に関して会談で「日米関係をさらなる高みに引き上げる」と強調した。
重点政策を巡って、首相と同様に創生日本のメンバーで積極財政派とされる片山さつき氏(66)を財務相、城内実氏(60)を経済財政担当相に起用。政治信条が近い小野田紀美氏(42)を外国人共生担当相に充てた。初入閣は10人で、女性閣僚は2人だった。
首相は全閣僚への共通指示の中で、財政の持続可能性に配慮しつつ、「責任ある積極財政」に基づく戦略的な財政出動を行うと明記した。法相には不法滞在対策の強化と出入国の管理徹底、厚生労働相には労働時間規制の緩和検討を求めた。
閣外協力となった維新から、遠藤敬国対委員長(57)を連立合意政策推進担当の首相補佐官に迎えた。
衆院の首相指名選挙は、無所属議員6人が高市氏に票を投じたため、1回目の投票で過半数に達した。ただ参院では過半数に届かず、決選投票の末、首相に指名された。
奈良県出身の首相は初。1993年に衆院初当選し10期目。
石破内閣は21日午前の閣議で総辞職した。7月の参院選で与党が大敗して以降、政策課題は停滞し、政治空白は約3カ月の長期に及んだ。
◆―― 早期の衆院解散否定 安保3文書の改定明言
高市早苗首相は21日、就任後初めての記者会見を官邸で開いた。早期の衆院解散の是非を問われ「経済最優先で取り組む。今すぐ解散どうのこうのと言っている暇はない」と否定的な考えを示した。国家安全保障戦略など安保関連3文書の改定を指示すると明言。防衛力強化に向け「見直し作業に取りかかる。一刻を争う状況だ」と述べた。
自民党総裁就任から新内閣発足まで時間を要したとして「国民に心よりおわび申し上げる」と政治空白の長期化を陳謝。「国家、国民のため結果を出す。強い日本をつくるため絶対に諦めない。国民と共にあらゆる政策を一歩でも二歩でも前進させる」と力説した。
長期政権を目指すかどうか問われ「腰を据えて長くやった方が政策実現の可能性は高まるが、国民の皆さまに委ねたい」と話した。
首相を含む全閣僚の給与に関し、身を切る改革の観点から議員歳費を超える給与を受け取らない法改正に取り組むと言及した。防災庁創設について、石破内閣の下で打ち出された方針を引き継ぎ、2026年度中の設置に向けた準備を進めると説明した。
27日で調整しているトランプ米大統領の来日が予定されていると言明した上で「信頼関係をまず深めたい」と語った。マレーシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議、韓国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)への出席に関し「多くの国の首脳と顔を合わせる絶好のチャンスだ」と指摘した。
日韓関係を巡り「韓国は重要な隣国だ。未来志向で安定的に発展させたい」と力説。「両政府間でしっかり意思疎通を進めていきたい」として、李在明大統領との会談に意欲を示した。