
会談に臨む(左から)日本維新の会の藤田文武共同代表、吉村洋文代表、高市早苗首相、自民党の鈴木俊一幹事長=21日午後4時19分、首相官邸
◆―― 小泉防衛相、片山財務相 女性2人、初入閣10人
自民党の高市早苗総裁(64)は21日、衆参両院本会議で第104代首相に選出された。官房長官に就く木原稔氏(56)が記者会見で閣僚名簿を発表。総裁選の決選投票を争った小泉進次郎氏(44)を防衛相に充てた。財務相に片山さつき氏(66)を起用した。初入閣は10人、女性閣僚は2人だった。連立を組む日本維新の会は閣外協力となるため、全て自民議員となった。臨時国会では、物価高対策を反映した2025年度補正予算案の成立を最優先に取り組む。
総裁選に立候補した林芳正氏(64)を総務相、茂木敏充氏(70)を外相とした。総裁選の推薦人からは片山氏のほか、黄川田仁志氏(55)を地方創生担当相、小野田紀美氏(42)を経済安全保障担当相、松本尚氏(63)をデジタル相にした。
平口洋氏(77)を法相、松本洋平氏(52)を文部科学相、上野賢一郎氏(60)を厚生労働相、鈴木憲和氏(43)を農相、石破茂前首相の最側近、赤沢亮正氏(64)を経済産業相に起用した。
国土交通相に金子恭之氏(64)、環境相に石原宏高氏(61)、復興相に牧野京夫氏(66)、国家公安委員長に赤間二郎氏(57)、経済財政担当相に城内実氏(60)を充てる。
官房副長官に尾崎正直氏(58)と佐藤啓氏(46)を据えた。佐藤氏は自民派閥裏金事件に絡み幹事長注意を受けた。
高市 早苗氏(たかいち・さなえ) 神戸大卒。松下政経塾生を経て93年衆院初当選、96年自民入党。沖縄北方担当相、党政調会長、総務相、経済安全保障担当相を歴任。25年10月4日に党総裁就任。64歳。奈良2区、当選10回。無派閥。
【首相指名選挙】 国会議員の中から首相を選ぶ選挙。内閣が総辞職した場合や衆院選後に実施する。衆参両院の本会議で記名投票を行い、過半数を得た議員が首相になる。過半数に届かなければ上位2人の決選投票となり、多数を得た議員が選ばれる。衆参で指名が異なり、両院協議会でも意見が一致しなければ、憲法の規定で衆院の議決が優先される。昨年10月の衆院選で与党が過半数を割ったため、翌11月の首相指名選挙は30年ぶりに決選投票となり、石破茂氏が野田佳彦氏を破った。
◆―― 目立つ論功、手腕未知数
【解説】高市早苗首相が21日誕生した。新内閣では、自民党総裁選で争った議員を重要閣僚で処遇したものの、側近を含め論功行賞による登用が目立つ。初入閣は10人に上り、手腕は未知数な顔触れが多い。連立政権を組んだ日本維新の会との合意文書では、保守色を前面に打ち出した政策が目立つ。国会での熟議や丁寧な説明が欠かせない。
首相は、総裁選で推薦人となった片山さつき氏や、自身の信条に近い小野田紀美氏らを起用。持論の積極財政のほか、タカ派色の強い政策を進めるとみられる。強く響きがちな自民の保守系議員の主張に対し、連立政権のブレーキ役を果たしてきた公明党の連立離脱の影響は少なくない。衆参両院で少数与党の状況が続く中、与野党対決が深まる展開も予想される。
それでは日本の政治は前に進まない。高市氏が優先すべきは、長期の政治空白を埋めることだ。物価高対策など喫緊の課題を先送りし、首脳外交を停滞させた自民の責任は重い。「政治とカネ」問題にも厳しい視線が注がれている。
不安定な政権運営を強いられる中、首相は野党の意見に耳を傾けつつ、スピード感を持って政策を実行することが求められる。初入閣10人を含む閣僚をどう束ね、結果をどう残すか。一刻の猶予もない。