
サントリーホールディングスの新浪剛史会長
サントリーホールディングス(HD)は2日、新浪剛史会長(66)が1日付で辞任したと発表した。新浪氏が購入したサプリメントが違法の疑いがあるとして福岡県警の捜査対象となったためだ。新浪氏を除く全取締役と全監査役が辞任を求める方針を確認。鳥井信宏社長らが本人と話し合った上で「一身上の理由」とする辞任届を1日に受理した。今回の対応について「捜査の結果を待つまでもなく、会長の要職に堪えないと判断した」と説明した。
鳥井氏は東京都内で記者会見し「みなさまにご心配、ご迷惑をおかけし、心よりおわびする」と謝罪。「業績にも影響が出る可能性がある。経営戦略は変わらず、信頼回復に努める」と語った。
山田賢治副社長は会見で、新浪氏の「会長の仕事を続けられなくて残念に思っている」とのコメントを代読した。新浪氏は「違法であるとの認識はなかった」と話したという。ただ同社は、サプリを扱う会社のトップとして、サプリ購入にはしかるべき注意を払うことが不可欠の資質だと指摘した。
新浪氏は3日、経済同友会の代表幹事の定例記者会見に出席し、自身の考えを表明する方針だ。
新浪氏は、2014年の社長就任前に買収した米ビーム社を足掛かりに海外事業をけん引してきた。今後の海外事業は鳥井氏が主導する。サントリーの会長職は創業家の佐治信忠氏と新浪氏の2人体制だったが、当面は佐治氏のみとなる。
財界活動に積極的な新浪氏は23年4月に同友会代表幹事に就いた。政府の経済財政諮問会議の民間議員も長く務める。林芳正官房長官は新浪氏の処遇に関し「適宜適切に対応する」と述べた。
捜査関係者によると、日本では違法性の疑いがある薬物類輸入に関する情報提供を門司税関(北九州市)から受け、福岡県警が8月22日、東京都内の新浪氏の自宅などを家宅捜索。違法薬物は見つからなかったが、県警は違法性の認識を含めて刑事責任の有無を慎重に調べている。
薬物類は新浪氏の知人が、米国から送ったとみられる。大麻由来の成分を違法な割合で含むもので、腰痛や不眠に効くとされる。
【サントリーホールディングス(HD)】1899年に鳥井信治郎氏が創業した非上場企業。当初はワインを取り扱っていたが、国産ウイスキーやビールに加え、清涼飲料なども手がける総合食品メーカーとなった。4代目社長の佐治信忠氏までは創業家出身者が経営を担った。2014年にローソンの社長、会長を務めた新浪剛史氏を初めて外部からトップに招いた。24年12月期連結決算は売上高に当たる売上収益は3兆4179億円、純利益は1761億円。
【経済同友会】日本経済の再建に向けた意欲を持つ中堅企業の有志が集まり、1946年に発足した日本を代表する経済団体。大企業が主な会員の経団連と異なり、企業の経営者が個人の資格で参加し、一般会員は2025年4月時点で約1700人。経済政策や雇用、環境、社会保障、エネルギーといった幅広い分野での政策実現を目指し、政府に提言している。