
大雨の影響で崩れた鹿児島県姶良市の網掛川の護岸=8日午前8時ごろ(株式会社山藤建設提供)
前線に向かって流れ込む暖かく湿った空気の影響で九州は8日、大雨となった。気象庁は未明、鹿児島県の薩摩、大隅地方で線状降水帯が発生したと発表。記録的な雨量となった霧島市に大雨特別警報を出し、土砂災害への最大級の警戒を求めた。鹿児島県内では家屋倒壊による病院搬送や道路の寸断による孤立が起きているとの情報がある。前線が停滞するため、九州は10日にかけて激しい雨が続く恐れがあり、低い土地の浸水、河川の増水や氾濫にも厳重な警戒が必要だ。
大雨特別警報が発表されたのは今年初めて。気象庁によると、霧島市の溝辺では午前3時までの1時間で107・5ミリの猛烈な雨が降り、同地点の観測史上最大に。午前5時ごろまでの12時間降水量は480ミリを超え、平年8月の1カ月分の約1・8倍になった。
気象庁は8日午後1時半、霧島市に出していた大雨特別警報を大雨警報に切り替えた。同庁は午後の記者会見で、今後少しの雨でも災害危険度が高まるとして「引き続き土砂災害、河川の増水や氾濫に厳重警戒を」と呼びかけた。
霧島市は市内全域に、鹿児島市は一部地域に「緊急安全確保」を発令。霧島市によると、道路が寸断され、孤立状態の地区があるとの情報やオートキャンプ場で数十人が孤立しているとの情報がある。県は、霧島市に災害救助法を適用したと発表した。
また姶良市の消防本部によると、市内の住宅1棟が倒壊し、住人女性2人が病院に搬送された。搬送時はいずれも意識はあったという。またこの住宅に住む女性1人と連絡が取れておらず、消防などが捜索している。JR九州は鹿児島線や日豊線など在来線の一部区間で、8日の始発から運転を見合わせた。
石破茂首相は「対応に万全を期す」と官邸で記者団に述べた。
低気圧が千島近海を北東へ進み、九州北部を通る前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ。上空の寒気や日中の気温上昇の影響もあり、北―西日本は10日にかけて、大気の状態が非常に不安定となる所がある。
9日午前6時までに予想される24時間降水量は多い所で、九州南部200ミリ、九州北部120ミリ、北海道、東北、関東甲信、北陸80ミリ。その後の24時間は九州北部、九州南部150ミリ。