
和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されてきた雌のジャイアントパンダ全4頭が28日、中国に返還される日を迎え、パンダをのせた2台のトラックが午前8時45分過ぎに園を出発した。航空チャーター便で四川省の繁殖研究施設へ向かう。
園では、園長やスタッフら約300人が笑顔で4頭を見送った。長年パンダの飼育を担当した飼育員・中谷有伽さんは取材に「朝の健康状態は良好で、送り出しまで順調に準備を進められた」と話した。
駐車場や車両出入り口前には、大勢のファンが待ち受け、寄せ書きをした横断幕を持った人も。トラックに手を振りながら「元気でね」「気をつけてね」と声をかけた。数日前に仙台市青葉区から訪れた小松よしえさん(56)は見送り後「飼育員にもパンダにも『ありがとう』と伝えられた」と涙を流した。
4頭は母良浜(24歳)とその子の結浜(8歳)、彩浜(6歳)、楓浜(4歳)。国内でパンダが見られるのは2頭を飼育している東京・上野動物園だけになる。
27日の公開最終日には開園前に約1400人が並び、お別れセレモニーには約3千人が詰めかけた。隔離検疫のため屋外展示は5月末に終了し、約1カ月間、ガラス越しの観覧となっていた。
アドベンチャーワールドは1994年、中国側とジャイアントパンダの共同繁殖研究を開始し、中国国外では最多となる17頭の育成に成功した。
【ジャイアントパンダ】中国西部の四川、陜西、甘粛省の山岳地帯に生息し、主に竹を食べる。東京・上野動物園などによると、体長120~180センチ、体重70~125キロ程度とされる。中国政府や民間による保護活動が行われている。ワシントン条約では商業目的の国際取引が原則禁止されている。国際自然保護連合(IUCN)によると、1990年に絶滅危惧種に指定され、2016年には3段階ある分類のうち「危急種」となった。