政府作業部会の報告書を受け取る赤間防災相(左)=19日午前、東京都千代田区
◆―― 中枢維持へ防災庁対策強化
マグニチュード(M)7・3の首都直下地震が発生し、最悪の場合、1万8千人が死亡するとの新たな被害想定を19日、政府の作業部会が公表した。3分の2が火災に巻き込まれて亡くなるとしている。建物の耐震化や木造住宅密集地域での防火対策が進んだことを踏まえ、2013年の前回想定(2万3千人)から5千人減。工場損壊や生産減少に伴う経済的な被害は、約13兆円減の82兆6千億円と見込んだ。
対策は一定の効果を上げているものの、15年策定の基本計画で掲げた、10年間で死者数を半減させる目標には及ばなかった。政府は今後、同計画を改定。26年度中に設置予定の防災庁を司令塔に、被害軽減と首都中枢機能の維持に向けた取り組みを強化する。
作業部会の増田寛也主査(野村総合研究所顧問)から報告書を受け取った赤間二郎防災担当相は「人的、物的な被害を減らすため、対策計画に反映させる」と強調。増田氏はその後の記者会見で「自分事として捉え、社会全体で態勢を構築することが重要だ」と訴えた。
M7級の首都直下地震は、30年以内に70%程度の確率で起こるとされ、首都中枢への影響が大きい都心南部を震源とするタイプで被害を想定した。冬の夕方に発生し、風速8メートルのケースで死者数が最大になる。1都4県で死者が出て、東京が8千人と全体の4割超。
建物の全壊・焼失は最大40万2千棟で前回想定から約21万棟減。避難者数は発生直後から徐々に増え、2週間後に480万人に及ぶと想定する。過去の地震を踏まえ、避難生活に伴う体調悪化などで生じる災害関連死の数を初めて推計。最大1万6千~4万1千人と幅を持たせて示した。
1都4県での帰宅困難者は、平日正午に発生した場合に840万人に上る。これとは別に、海外を含む域外から観光や出張で訪れた65万~88万人も滞留する恐れがある。
当面の発生の可能性は低いとされるが、相模トラフ沿いを震源とする関東大震災型のM8級の被害も推計。前回、死者数を最悪7万人と想定していたが、今回は2万3千人で大幅に減った。
【木造住宅密集地域】震災時に延焼被害の恐れがある木造の老朽住宅が集まる市街地。耐火性が低い物件が多いほか、倒壊で道がふさがれ住民避難や消火が難しくなるリスクも指摘されてきた。太平洋戦争時の空襲被害をまぬがれ街並みが残った地区や、高度経済成長に伴う人口集中の受け皿として整備された郊外などに目立つ。全国に点在し、政府は2012年に「著しく危険な密集市街地」を公表、自治体による解消を後押ししてきた。24年度末時点で1347ヘクタール残っており、30年度までにおおむね解消することを目指している。



























































