
署名した連立政権合意書を報道陣に示す自民党の高市総裁(右)と日本維新の会の吉村代表=20日午後、国会
◆―― 高市氏、初の女性首相へ 公明離脱で枠組み変更
自民党と日本維新の会は20日、連立政権樹立で正式合意した。自民の高市早苗総裁と維新の吉村洋文代表が国会内で会談し、合意文書に署名した。維新は当面閣僚を出さない閣外協力にとどめる。衆院では自民会派と維新会派を合わせれば過半数に近づく。21日召集の臨時国会で行われる首相指名選挙で、高市氏が初の女性首相に選出される見通し。同日中に新政権が発足する。公明党が10日に連立政権離脱を表明したのを受け、自民は政権枠組みを変更する。
閣外協力の維新から遠藤敬国対委員長を首相補佐官に起用する案が浮上している。
両党の政策協議では、維新が提示した12項目の要求のうち、憲法改正や外交・安全保障、エネルギーなどの基本政策で一致した。「副首都」構想の推進も確認した。
吉村氏が「連立の絶対条件」とした国会議員定数削減は衆院議員の1割を目標に据え、臨時国会に関連法案を提出して成立を図る方針だ。
焦点だった消費税減税は2年間限定で食料品の0%を視野に検討することとし、企業・団体献金の廃止は高市氏の自民総裁の任期である2027年9月までに結論を得る方向で折り合った。
大阪を地盤とする維新は、橋下徹元大阪市長らが12年に結党した旧日本維新の会が源流。「是々非々」路線で政権と微妙な距離を取ってきた。
【連立政権】複数の政党が協力して運営する政権。衆院で過半数の議席を保持する党がない場合や、政権の安定化を図る目的で生じる。過去には、1993年に8党派による細川連立政権が発足。98年発足の小渕内閣は当初、自民党単独政権だったが、99年1月に自由党、同10月に公明党が加わった。2003年、保守新党が自民に合流して自公2党の連立政権に移行。自民が政権を奪還した12年以降も自公連立が続いたが、公明が今月10日に離脱を表明し、協力関係が終わった。
◆―― 窮地の自維、思惑一致
【解説】自民党と日本維新の会が20日、連立政権樹立で正式合意した。公明党の連立離脱で窮地に立たされた高市早苗自民総裁は、自身の首相指名に向けて連携先を模索。維新は党勢低迷から抜け出せず、局面打開を模索していた。双方の思惑が一致して連携が実る形となったが、重要課題は先送りされ、数合わせの印象が拭えない。
自民の国政選挙敗北や政局混迷の一因となった「政治とカネ」を巡る企業・団体献金の扱いは、今回の合意で2027年9月まで結論を延ばした。裏金事件で「自民とは一緒にやれない」と痛烈に批判していた維新は、連立協議で議員定数削減を突き付けた。唐突感は否めない。
維新は昨年の衆院選で5議席減らし、7月の参院選も改選6から1議席増と振るわなかった。かつて「第三極」として注目を集めた政党も、埋没感が顕著だ。
衆参両院の少数与党転落に端を発した政治空白は3カ月にわたり、物価高など喫緊の課題は置き去りにされた。国民世論は以前にも増して厳しい。信任を得た船出ではないと自覚するべきだ。