
東京電力福島第1原発のデブリ取り出しについて開かれた記者会見=29日午後、東京都千代田区
◆―― 東電「準備に12~15年」 廃炉目標達成困難か
東京電力は29日、福島第1原発の廃炉で最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の本格的な取り出しが、3号機を皮切りに2030年代初頭に着手する目標から遅れて37年度以降にずれ込むと発表した。3号機の準備作業に12~15年程度かかるためとしている。政府と東電は工程表「中長期ロードマップ」で事故発生40年となる51年までの廃炉完了を目標に掲げているが、達成は難しくなるとみられる。
東電の小野明廃炉責任者は記者会見で「物理的に考えて厳しいと思っているが、(3号機から)後ろの工程は見えておらず目標は下ろさない」と強調。一方で東電に技術面で助言する原子力損害賠償・廃炉等支援機構の更田豊志廃炉総括監は別の会見で「元々困難だ」と指摘した。
東電は既に示していた原子炉格納容器上部から入れる取り出し装置に加え、容器側面の貫通部から別の装置を挿入する工法を提示。上からの装置でデブリを砕いて底に落とし、側面からの装置で回収するといった連携を想定する。上部の装置を減らして建屋の耐震性を確保する上でも利点があるという。
また取り出し設備を備えた建物を造るに当たり、東電は①作業の妨げになる廃棄物処理建屋を先に解体し、原子炉建屋をまたぐ構台を設置②廃棄物処理建屋を解体せず軽量化した架台を原子炉建屋上に設置―する2案を示した。機構は今後1、2年かけて東電の計画に実現性があるか精査する。
東電はどちらの案を採用するかにかかわらず、放射性物質の漏えいリスクを下げるため1~4号機の廃棄物処理建屋全てを最終的に解体すると決めた。
デブリは1~3号機に880トンあると推計される。2号機で昨年11月と今年4月に計1グラム未満を試験的に採取した。政府と東電は使用済み核燃料プールからの燃料移送が既に完了し作業環境を早く整備できる3号機での取り出し工法の検討を先行。デブリを気中に露出させて水をかけながら取り出す工法と、充填材で固めて掘削する工法の併用案を有力視している。
【福島第1原発の廃炉工程】2011年3月の東日本大震災に伴う事故により全6基の廃炉が決定。政府と東京電力は、事故発生から30~40年となる2041~51年までに廃炉を完了する工程表「中長期ロードマップ」に基づき作業を進めている。工程は3期に区分され、第1期は、13年11月の4号機使用済み核燃料プールからの燃料取り出し開始で終了。24年9月に2号機の溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しを始めたことをもって第2期から最後の第3期へ移行した。デブリの処分方法や、廃炉完了後に敷地をどのような状態にするのかはいまだ決まっていない。