
日米関税交渉について「相互関税」を15%とすることで合意したと発表した石破首相=23日午前、首相官邸
◆―― 自動車は半減 日本はコメ輸入拡大
【ワシントン共同】石破茂首相は23日、日米関税交渉が合意したと発表した。米側は25%と宣言していた日本に対する「相互関税」を15%に下げる。日本車と主な自動車部品に課す25%の追加関税を半分の12・5%にし、既存の関税2・5%と合わせ計15%とする。日本は既存のミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内で米国産のコメ輸入量を増やす。石破氏は「対米黒字を抱える国の中で最大の引き下げ幅を得られた。大きな成果だ」と強調した。
日本は当初、全ての追加関税の撤廃を要求していたが、最終的には一定の譲歩を迫られた形だ。
トランプ米大統領も22日、ホワイトハウスで演説し「史上最大の貿易合意に署名した」と表明。演説に先立って自身の交流サイト(SNS)にも投稿し「日本は自動車やコメ、その他の農産物などの貿易について国を開放する」と説明した。
ミニマムアクセスはコメに高関税を課す代わりに、年約77万トンを無関税で輸入する仕組み。関係者によると、長粒種米の輸入を減らし、主食用にも使える米国産の中粒種米を増やす。石破氏は「農業を犠牲にする(合意の)内容は一切含まれていない」と述べた。
トランプ氏はSNSに「日本は米国に5500億ドル(約80兆円)を投資し、利益の90%を米国が受け取る」とも書き込んだ。演説では「アラスカでの液化天然ガス(LNG)事業について日本と合意する予定だ」とも語った。
石破氏は、対米投資に関し「医薬品、半導体などの分野で政府系金融機関が最大5500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供可能にすると合意したというのが正確なところだ」と話した。日本企業による米国への投資を通じ、鉄鋼や造船といった経済安全保障上、重要な分野について強靱な供給網を構築する方針でも一致したという。
8回目の関税交渉で訪米中の赤沢亮正経済再生担当相によると、米国が鉄鋼、アルミニウムにかけている50%の追加関税は日米合意の対象外。防衛費の問題も含まれていない。
◆―― 首相発言要旨
日米関税交渉合意を巡る石破茂首相の発言要旨は次の通り。
【関税交渉】
米国の関税措置に関してトランプ米大統領との間で合意に至った。基幹産業である自動車と自動車部品について、4月以降に課された25%の追加関税率を半減し、既存の税率を含め15%とすることで合意した。
相互関税について、25%まで引き上げるとされていた日本の関税率を15%にとどめることができた。
半導体や医薬品といった経済安全保障上の重要物資について将来、関税が課される際も、他国に劣後する扱いにはならないとの確約を得ている。
農産品を含め、日本側の関税を引き下げることは含まれていない。ミニマムアクセス(最低輸入量)の枠内でコメの輸入割合を増やしていく。今回の合意に、農業を犠牲にする内容は一切含まれていない。
対米黒字を抱える国の中で最大の引き下げ幅を得られた。大きな成果だ。
【対米投資】
日本企業による米国への投資を通じ、半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、人工知能(AI)など経済安保上、重要な分野について強靱なサプライチェーン(供給網)を構築するため、日米で緊密に連携することで合意した。
医薬品、半導体などの分野で政府系金融機関が最大5500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供可能にすると合意した。
【日米首脳会談】
トランプ氏と必要に応じて電話会談、あるいは対面での会談を行う。
【首相進退】
(自らの進退について)赤沢亮正経済再生担当相が米国から帰国する。詳細な報告を受け、よく精査していきたい。