
陸上自衛隊の佐賀駐屯地に到着した輸送機V22オスプレイの前に整列する隊員ら=9日午前、佐賀市
◆―― 8月中旬までに全17機
陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイ1機が9日、経由地の高遊原分屯地(熊本県)から、同日開設した佐賀駐屯地(佐賀市)に到着した。8月中旬までに暫定配備先だった木更津駐屯地(千葉県)から全17機が移駐し、配備が完了する予定。九州・沖縄の防衛力を強化する「南西シフト」の一環で、島しょ部への隊員輸送などを担う。
オスプレイは開発段階からトラブルが多く、乗員が死亡する重大事故が相次いでいる。防衛省はこれまで「累次の機会に安全性を確認している」と説明しているが、懸念は根強い。
陸自によると、駐屯地は佐賀空港に隣接し、空港の滑走路を使う。隊員数は約420人。駐屯地では9日、開設式が開かれた。西部方面総監の荒井正芳陸将は訓示で、中国やロシアなどの活動の活発化に触れ「九州、沖縄の防衛の重要性は年々高まっている。佐賀駐屯地は戦略的に極めて重要だ」と述べた。駐屯地の正門前では配備に反対する市民らが抗議活動をした。
オスプレイの主任務は離島防衛専門部隊「水陸機動団」(長崎県)の輸送で、今後連携訓練に取り組む。目達原駐屯地(佐賀県)のヘリコプター約50機も佐賀駐屯地に移す。
2018年8月に佐賀県が配備を受け入れ、防衛省は23年6月に駐屯地建設を始めた。今年6月末に関連施設の整備が終わった。
オスプレイは固定翼機とヘリのような回転翼機の特徴を兼ね備えており、ローターの角度を変えることで垂直離着陸やホバリングが可能。従来の大型輸送ヘリよりも航続距離が長い。
オスプレイを巡っては16年12月、沖縄県名護市沖で米海兵隊機が不時着して大破したほか、23年11月には米空軍機が鹿児島県・屋久島沖で墜落して8人が死亡した。陸自機も昨年10月、日米共同統合演習に参加していた1機が与那国駐屯地(沖縄県)で損傷事故を起こした。
【自衛隊の南西シフト】中国の海洋進出や台湾有事への懸念を背景に九州、沖縄の防衛力を強化する政府の方針。2010年の「防衛計画の大綱」で、南西諸島が「自衛隊配備の空白地域」になっているとして部隊配備を打ち出した。16年以降、与那国島、奄美大島、宮古島、石垣島に駐屯地を開設。18年3月には、長崎県に離島防衛の専門部隊として水陸機動団が発足した。今後、那覇駐屯地を拠点とする陸自第15旅団の師団格上げなどを予定している。