
静岡県熱海市の大規模土石流が発生したとされる時刻に、被災地で黙とうする(左から)斉藤栄市長、鈴木康友知事ら=3日午前10時28分
災害関連死を含む28人の犠牲者を出した静岡県熱海市の大規模土石流発生から4年となった3日、市は被災地の伊豆山地区で追悼式を開き、55人が参列した。「とにかく会いたい」。遺族は故人に黙とうをささげ、献花した。斉藤栄市長は「災害の経験や教訓を後世に継承し、復興の道のりは平たんではないが確実に推進する」と述べ、鈴木康友知事は「穏やかな日常が戻るよう生活再建に努める」と呼びかけた。
土石流は、2007年ごろから起点の土地で違法に造成された盛り土が一因とされる。21年7月3日、大雨で崩落し、住宅街に流れ込んだ。
式では28人の氏名が読み上げられた。遺影を持って参列する遺族もおり、祭壇に花を手向け涙を拭う姿も見られた。市長の式辞が終わると「人災ですよ」との声も飛んだ。
発生時刻とされる午前10時28分にはサイレンが響き、遺族らが手を合わせた。妹の松本光代さん=当時(63)=を亡くした神奈川県鎌倉市の加藤久美子さん(69)は「(4年は)早かったけれど、寂しい気持ちは変わらない。会いたい」。熱海市伊豆山に住む小磯洋子さん(75)は、長女西沢友紀さん=当時(44)=を失った。「昨日のことのよう。なぜこれだけの犠牲者が出たのか」と涙ながらに疑問を口にした。
原則立ち入り禁止とされた旧警戒区域(23年解除)では、避難した132世帯227人のうち、帰還したのは約2割の26世帯54人(6月20日時点)。21世帯43人が避難生活を続けている。
県警は遺族からの告訴を受け、業務上過失致死容疑などで現旧土地所有者を捜査中。一部の遺族は、適切な対応をしなかったとして斉藤氏も告訴している。
遺族らは現旧所有者や県市に損害賠償を求めて提訴しているが、いずれも争う姿勢を示している。