
日鉄興和不動産室蘭事業所 鈴木誠治氏
中島地区の中核を担う商業施設に
――開業当時の思いは。
「07年に開業したが、その数年前から新日本製鐵(当時)が所有する中島グラウンドを活用させていただき、地域の起爆剤となるような商業施設を開発できないかと、周辺商店街も含めて協議を進めていた。当時は札幌に大型百貨店、苫小牧にショッピングモールが相次いで開業したこともあり、室蘭市から買い物客が遠方に流出していた背景があった。そのような中、中島グラウンドの有効活用の計画が持ち上がった。周辺にはたくさんの飲食店や商店街組織があることから、当時の代表者の人たちといろいろな協議を重ねてきて、周辺に人が流れるなど相乗効果が期待できる施設づくりを目指してきた」

「長﨑屋室蘭中島店や丸井今井室蘭店(当時)がすでに立地していたことで、当時から人が集まるなら『中島エリアだよね』という認識はあった。丸井今井室蘭店ではいろいろなイベントを開催していた経緯もあり、閉店した後は、モルエがその役を担うことも感じていた。現在イベントスペースは、さまざまな用途で活用していただいており、法人が営業活動で使用するほか、公的要素の強いイベントについては無償で貸し出している」

「計画当初から協議を進めてきた中で、地域との共存が一番のキーワードだった。他地域ではショッピングセンター開業後、市街地の空洞化が発生する問題もあったため、地域との情報共有や信頼関係を絶対に崩さないことが大前提と考えていた。設計の段階ではなかったモルエモール棟の南側出入り口を新設したことも、地域商業者の皆さまから頂いた声を反映させた対応だった」
――開業時に気を遣った点は。
「最初に計画説明をした時には、業種を問わず、いろいろな悪影響が出るのでは、という心配の声が寄せられることも正直あった。時間をかけながら丁寧に説明していくことで、最終的には理解を得られた。開業後は周辺に飲食店など新規店舗の出店や賃貸マンションができ、定住機能も高まるという相乗効果も出ているのではないか」
――テナント誘致もお客様本位と感じられます。
「開業当初は、ナショナルブランドと地元資本テナントのリミックスでスタートした。開業後は、年に1回行っているお客さまのアンケートを参考にしている。毎年秋ごろに行っており、サンプルは約600から700程度集まる。当施設への要望に加えて、今後出店してほしいテナントなど多く寄せられた声を極力取り上げるようにしている。中島エリアに買い物客が訪れた際、どのような施設があれば長く滞在してもらえるかを主眼に置いている。
テナント出店に至るまでは、最初のアプローチから3~5年かかるものもある」


「現在、幸いなことに多くの商業者さまよりモルエに出店したいという要望を頂き、協議を行っている段階だ。今後は商業面での拡張だけではなく、違った展開の開発も検討させていただき、市民に愛されるエリアを目指していきたい」


モルエ中島を含む提携店舗での買い物額に応じて、タクシー運賃に充当できるクーポンを発行することや、提携店舗に設置した予約用のタブレットからタクシーを配車予約できることなどを予定している。
10月11日には、実証実験のPRもモルエ中島で行われた。日鉄興和不動産室蘭事業所上級部長代理の青栁理郎氏は「車がなくてもモルエに来てもらうためには、交通手段をどう確保するかがポイント」とした上で「タクシー会社同士の横の連携もあり、車がない場合でもタクシーがすぐに迎えに来る。買い物の重要な移動手段として確保できるほか、地域の高齢化が進んでいることもあり、買い物に行けないという悩みの解決策になるのでは」と期待する。
道外での遊休地活用に携わった事例も振り返り「高台に住んでいる人がまち中を訪れることができるよう、十数年前から取り組んできた地域では、タクシーなどを巡回させることで、少しずつ解決につながっているという先行事例もある。MaaSの認知度を高めることで、気軽に利用できる体制を整えたい」と意気込む。
同事業所の宮川雅史氏も「モルエを中心に買い物をするためには、地域によっては公共交通機関を乗り継ぐ必要もある。既存交通網でカバーできない部分をMaaSで支えられるので多くの人に利用してもらい、室蘭全体の活性化につながれば」と話す。

日鉄興和不動産室蘭事業所 上級部長代理・青栁理郎氏

日鉄興和不動産室蘭事業所 宮川雅史氏
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