厚労省前で生活保護費の全額補償を訴える人たち=17日午前、東京・霞が関
◆―― 最高裁判決巡り
厚生労働省は17日、生活保護費の2013~15年の引き下げを違法とした最高裁判決を巡り専門委員会を開き、対応策の報告書を取りまとめた。補償は減額分の一部が妥当とする一方、紛争解決のため原告に全額支給も「考えられる」との案を併記した。政府は週内にも、与野党から意見を聞いて内容を決定したい考え。原告側は全額補償を求めており、政府判断が焦点となる。
政府は補償の関連費用を25年度補正予算案に盛り込む方向で、原告には予備費などを活用した早期支給も検討する。
最高裁は今年6月の判決で、専門家の審議を経ていないなどとして当時の引き下げを違法と判断し、減額処分を取り消した。
厚労省は専門委を設置し、8月から対応策を協議。当時の引き下げ手法のうち受給者間の均衡を図る「ゆがみ調整」(約90億円削減)は違法と認定されなかった。報告書では、改めて適用して補償に含めないことは「許容される」としつつ、原告には適用しないことも「解決の一手法」として考えられるとした。
厚労省が独自に算出した物価下落率(4・78%)を用いた「デフレ調整」(約580億円削減)は違法とされたため、代わりに当時の消費水準に合わせた引き下げを提案。一般低所得世帯の消費が落ち込んでいたことから、少なくとも2・49%など三つの引き下げ幅を例示した。ただ再度の引き下げは紛争解決の観点から原告は対象外とすることを選択肢とした。
補償に関し、高市早苗首相は14日の参院予算委員会で「専門委の結論を得た上で政府の方針を決定する」と述べた。
【生活保護】最低生活費より収入が少ない人に不足分を支給する制度。最低生活費は、食費や光熱費といった日常生活の費用である「生活扶助」、家賃が中心の「住宅扶助」、医療サービス費用「医療扶助」などの合計額としている。金額は厚生労働相が定める生活保護基準を使って計算し、家族構成や地域で異なる。ここから年金などの収入を差し引いた額が生活保護費として支給される。8月時点で約165万世帯、約199万人が受給している。

































































