
「退職代行モームリ」の運営会社「アルバトロス」が入るビルから運び出した段ボール箱を車両に積み込む警視庁の捜査員ら=22日午前11時32分、東京都品川区
退職希望者に代わり退職の意思を会社に伝える「退職代行モームリ」の運営会社「アルバトロス」(東京都品川区)が、代行の仕事を違法に弁護士にあっせんして報酬を受け取っていた疑いがあるとして、警視庁は22日、弁護士法違反容疑で本社や弁護士側の関係先など複数箇所を家宅捜索した。
警視庁によると、同社は退職希望者を紹介した弁護士から報酬を受け取っていたとみられる。弁護士法は無資格者が報酬目的で法律事務をしたり、あっせんしたりすることを禁止している。警視庁はこの他にも、同社が退職を巡って会社側と交渉をするなど、同法違反に当たる行為があった可能性があるとみて、押収した資料を調べる方針。
退職代行業者は近年増加しているとみられる。その背景として、労働力不足の「売り手市場」で転職しやすい状況が追い風になっていることや、旧態依然とした企業と若い世代のミスマッチの増加が指摘されている。
モームリはホームページで代行費用は正社員で2万2千円などと案内しており、実績として4万件以上の退職を確定させたと紹介。「弁護士以外が交渉を行うと違法になるが、退職意思の『通知』に徹しているので違法性は一切ない」と記載し、弁護士の名前を挙げ「監修のもと、法律にのっとった適正な業務を行っている」としている。
アルバトロスのホームページや民間調査会社によると、同社は2022年2月に設立し、従業員数は68人(アルバイトを含む)。25年1月期の売上高は前期比で約3倍の3億3千万円ほどで、大幅増となっていた。
【退職代行サービス】 労働者の退職手続きを代行するサービス。人事担当者らと顔を合わせずにスピード決着できるなどの利点があるとされる。東京商工リサーチが2025年6月に実施した調査で約6600社から得た回答では、24年1月以降に退職代行業者を活用した従業員の退職を経験した企業は7・2%に上った。