
ノーベル化学賞の受賞決定から一夜明け、職員から花束を受け取る京都大の北川進氏(右)=9日午前、京都市左京区
◆―― 「昨日はバタンキュー」
無数に開いた微小な穴に物質を出し入れできる新材料「金属有機構造体」を開発し、今年のノーベル化学賞に選ばれた京都大特別教授の北川進さん(74)が、発表から一夜明けた9日朝、京都市左京区の京都大吉田キャンパスに出勤し、大学職員から花束が贈呈され、祝福を受けた。報道陣から研究者を志す人への言葉を尋ねられ「ますますチャレンジ精神でやっていただきたい」とエールを送った。
北川さんは「昨日は何とか睡眠をしっかり取ろうと思って『バタンキュー』で、気持ち良く朝起きた」とも話した。昨夜の記者会見後には、約100人の学生らに出迎えられた。「この賞に対する期待を感じた。心新たに引き締めたい」と語った。
受賞決定で多忙な日々が続くと予想され「ノーベル賞が発表されると、ただのおじさんが急に変わる。いつも祈っていることは『平穏』だが、良い意味で平穏ではなくなったので、どうしようかな」と笑いを誘った。
京大は9日付で、ホームページに北川さんの妻のコメントを公開。「結婚以来、研究・仕事一筋に歩んできた姿をずっと見てきたので、今回、その努力がこのような形で認められたことを喜んでおります」とし、関係者への感謝もつづった。
スウェーデンの王立科学アカデミーは、大気から二酸化炭素(CO2)を回収したり、一部の物質で発がん性が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)を水から分離したりする技術に貢献する可能性があると評価した。
日本のノーベル賞受賞は個人では30人目、昨年平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(被団協)と合わせると31例目となった。今年は大阪大特任教授の坂口志文さん(74)も生理学・医学賞に選ばれ、同じ年に2分野で受賞が決まったのは2015年以来。
北川さんは海外の研究者2氏との共同受賞。授賞式は12月10日にストックホルムで開かれる。