
洋上風力発電所建設計画からの撤退について話す、三菱商事の中西勝也社長=27日午後、東京都千代田区
◆―― 政府の再エネ戦略岐路
三菱商事は27日、秋田、千葉両県沖の3海域で進めてきた洋上風力発電所の建設計画から撤退すると発表した。中西勝也社長が東京都内で記者会見し、建設費用が4年前の入札時の見込みから2倍以上に膨らんだことで採算が合わなくなったと明らかにした。中部電力子会社などと企業連合を組んで臨んだ大型プロジェクトが計画倒れに終わり、政府の再生エネルギー戦略は岐路に立たされる。
国は事業者を再公募して出直しを図る構えだが、事業者には資材価格の高騰などコスト上昇が高いハードルとなりそうだ。
中西氏は、事業継続が困難との判断に至ったと説明した上で「大変重く受け止めている」と述べた。「地元の期待を裏切る結果になって大変申し訳ない」とも語り、今後、秋田と千葉両県に出向き経緯を説明する考えを示した。自身の経営責任に関しては「引き続き責務を全うし、三菱商事をリードしたい」と述べ、引責辞任を否定した。
企業連合に子会社の電気設備大手シーテック(名古屋市)が参加した中部電力は27日、撤退に伴い2026年3月期に170億円程度の損失を見込むと発表した。三菱商事は業績への影響は限定的だとしている。
武藤容治経済産業相は経産省を訪問した中西氏と面談し「全国の注目案件で、洋上風力に対する社会の信頼を揺るがしかねない」と懸念を伝達。地元への丁寧かつ真摯な対応を求めた。
3海域は「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」と「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」。28~30年に順次運転を始め、52年まで操業する目標だった。企業連合は国の公募ルールに基づき計200億円の保証金を積み立てていたが、没収となる。
企業連合は21年、固定価格買い取り制度(FIT)を利用した売電価格で競合よりも圧倒的に安い水準を提示して落札。経産省が22年に事業計画を認定した。
【再生可能エネルギー】太陽光や風力、水力、地熱などを発電に利用するエネルギー。石油や天然ガスといった化石燃料と違い、繰り返し利用できる。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を原則排出せず、政府が普及を後押ししている。再エネ由来の電気を電力会社が一定期間、固定価格で買い取る制度などがあり、買い取り費用は家計や企業が電気代の一部で負担している。