
京都アニメーション放火殺人事件の現場となった第1スタジオ跡地で開かれた追悼式=18日午前、京都市伏見区(同社提供)
36人が死亡、32人が重軽傷を負った2019年7月の京都アニメーション放火事件から6年となった18日、現場の第1スタジオ跡地(京都市伏見区)で追悼式が開かれた。遺族や八田英明社長、社員ら約150人が参列し、祈りをささげた。遺族代表は追悼の言葉で「残した作品は、今も多くの人の心を動かしています。あなたたちが生きた意味が確かにあったのだと誇りに思います」としのんだ。
追悼式は非公開で、解体され、更地のままの第1スタジオ跡地にテントを設置して実施。「追悼」の文字を記した祭壇に、犠牲者と同じ数の36本のヒマワリを飾った。発生時刻の午前10時半ごろ、黙とうをささげた。
追悼の言葉は、同社の代理人弁護士が明らかにした。遺族代表は「私たちの心の中で、ずっと生き続けていくでしょう」、社員は「皆さんからいただいた志を作品を通してつなげていきます。これからも見守っていてください」と悼んだ。
八田社長のあいさつ文も明らかにし「作品を制作する中で、いかに皆の力が大きかったかを思います」と仲間を惜しんだ。
同社は同日までにウェブサイトで、ファンらからの応援に感謝を伝えるとともに「時の経過にかかわらず、悲しみが癒えることはない」と記している。
24年7月、本社のある京都府宇治市の公園に、犠牲者の存在や各地からの支援などを記憶にとどめるための碑が完成。これとは別に、第1スタジオ跡地に慰霊碑を建てる方針だ。
事件は7月18日発生。京都地裁は24年1月、殺人罪などで青葉真司死刑囚(47)に死刑判決を言い渡した。青葉死刑囚側は控訴したが、25年1月に本人が控訴を取り下げて死刑が確定。弁護人が控訴取り下げの効力を争っている。
【京都アニメーション放火殺人事件】2019年7月18日午前10時半ごろ、京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオから出火。社員ら36人が死亡、32人が重軽傷を負った。京都府警は20年5月、殺人などの疑いで青葉真司死刑囚を逮捕。京都地検が同罪などで起訴した。23年9月から京都地裁で裁判員裁判が始まり、24年1月に死刑判決。死刑囚側は控訴した。今年1月に本人が控訴を取り下げ、死刑が確定。弁護人が取り下げの効力を争う申し入れ書を大阪高裁に提出した。高裁が今後、取り下げの有効性について判断を示すとみられる。
◆―― 社員数、事件前超える 完全新作も、復興へ着実
京都府宇治市に本社を置く京都アニメーションは、2019年7月の放火殺人事件で、第一線で活躍したアニメーターを含む多くのスタッフを失い、今も職場に復帰できていない人がいる。一方で、社員数は事件前を超え、事件後初となる「完全新作」のテレビ放送も今月から始まるなど、復興へ着実な歩みを見せている。
同社の代理人弁護士によると、事件前に約170人だった社員数は、今月時点で186人。うち84人は事件後に入社した。新規採用にも積極的で、応募も多いという。
事件後の作品は、映画とテレビシリーズを合わせて11作品。完全新作の「CITY THE ANIMATION」は、あらゐけいいちさんの漫画が原作で、事件後に構想、制作された。今月から放送が始まった。
亡くなった武本康弘さん=当時(47)=が監督を務めたテレビアニメ「小林さんちのメイドラゴン」シリーズの映画化も事件後に進められ、6月に劇場公開された。
弁護士は同社の制作力について「全体の力は年々増していると感じる」と話した。