
年金制度改革法案を可決した衆院本会議=30日午後
◆―― 首相「給付水準を確保」
衆院厚生労働委員会は30日、年金制度改革法案を自民、公明、立憲民主3党の賛成多数で可決した。3党は、基礎年金(国民年金)底上げの将来的な実施を付則に明記する修正案を共同提出しており、3党の修正案も可決された。午後の本会議でも賛成多数で可決され衆院を通過した。今国会で成立する見通しだ。
厚労委に出席した石破茂首相は質疑で、修正案の実現によって「将来の幅広い世代の給付水準を確保できる」と述べた。底上げの効果や趣旨を「丁寧に説明していく」とした。厚労委での採決前の討論で国民民主党の浅野哲氏は、底上げに伴う国費の財源確保策が示されていないとして「不十分な内容と言わざるを得ない」と批判した。
厚労委に先立つ理事会で与党が30日の委員会採決を改めて提案。国民民主党などが反対して意見が割れたが、藤丸敏委員長(自民)が職権で採決を決めた。
底上げは、就職氷河期世代などが低年金に陥るのを防ぐ対策の一環。修正案では、2029年に行う年金の「財政検証」で基礎年金の給付水準低下が見込まれる場合に、底上げする。会社員らが入る厚生年金の積立金を活用。基礎年金の半分は国費で賄われており、最大で年2兆円規模が追加で必要になると見込まれる。
法案には、扶養されるパートらが厚生年金に加入するのを拡大するため、加入の年収要件(106万円以上)撤廃などが盛り込まれている。年収要件は、働く時間を抑制して保険料負担を避ける「106万円の壁」とされてきた。
【年金制度改革】社会や経済の変化に対応するため、おおむね5年に1度行っている。厚生労働省が公的年金の長期的な給付水準を試算し、年金財政の健全性を点検する「財政検証」の結果を参考にする。2024年の検証結果に基づき、政府が国会に提出した法案には、パートらの厚生年金加入拡大の他に①働く高齢者の厚生年金を減らす「在職老齢年金制度」見直し②高所得の会社員らが支払う厚生年金保険料の上限引き上げ―などを盛り込んだ。