
参院本会議で「能動的サイバー防御」導入に向けた関連法案が可決、成立し、一礼する平サイバー安保相=16日午後
◆―― 「通信秘密」を一部制限
サイバー攻撃に先手を打って被害を防ぐ「能動的サイバー防御」導入に向けた関連法案を採決する参院本会議が16日開かれ、賛成多数で可決、成立した。政府が通信情報を平時から監視し、攻撃元の無害化を可能とする内容が柱。電気や鉄道などの基幹インフラ事業者には、被害に遭った場合の報告を義務付ける。
政府は、国内外でサイバー攻撃が相次ぐ現状を踏まえ、法整備を急いでいた。2027年までの本格運用を目指す。憲法が保障する「通信の秘密」を一部制限する制度となっており、プライバシー保護を徹底し目的外使用を防ぐ厳格な制度運用が求められる。
林芳正官房長官は16日の記者会見で「官民が連携して、より早期、効果的な対応が可能となる」と法整備の意義を強調した。
政府が分析・監視する通信情報は①日本を経由する外国間②外国から国内③国内から外国―の3種類。国内間の通信は対象外で、メール本文のようなコミュニケーションに関わる情報も分析しないとしている。ただ一部野党からは、将来的な分析対象の拡大を懸念する声が出ている。
攻撃元のサーバーを無害化する措置はまず警察が担い「特に高度で組織的かつ計画的な行為」には自衛隊が当たる。情報監視や無害化措置が適正かどうかをチェックするための第三者機関「サイバー通信情報監理委員会」を新設する。
政府による恣意的運用を警戒する野党の主張を受け、当初の政府案を修正し、「通信の秘密」尊重規定を加えた。
【能動的サイバー防御】サイバー攻撃に先手を打って相手側のサーバーに入り込み、無害化を図る対応。政府は、国内外で相次ぐサイバー攻撃が国民生活にもたらす影響を危惧。2022年策定の国家安全保障戦略に、サイバー防御力を欧米主要国と同水準以上に高めるため導入方針を明記した。通常国会では質疑に首相が出席する「重要広範議案」に指定。与党と一部野党が法案修正で合意し、「通信の秘密」の尊重規定を加えた上、運用状況のチェックで国会の関与を強化する内容に改めた。