
記者会見する日産自動車のイバン・エスピノーサ社長=13日午後、横浜市
◆―― 6708億円の赤字転落 販売不振、大規模合理化
日産自動車は13日、2027年度までに国内を含む7工場を閉鎖すると発表した。車両生産工場を17から10に統廃合する。併せて27年度にかけて国内外でグループ従業員の約15%に当たる2万人を削減し、中国を除く世界の生産能力を約3割落とす。大規模な合理化で過剰な設備と人員を適正化し、業績立て直しを急ぐ。同時に公表した25年3月期連結決算は純損益が6708億円の赤字(前期は4266億円の黒字)に転落した。販売不振に加え、リストラ費用の計上が響いた。
閉鎖工場は念頭にあるものの、現時点では具体的に明らかにできないと説明した。人員削減は24年11月に9千人と公表していたが、1万人超追加する。中国を除く世界の生産能力を24年度の350万台から27年度に250万台に減らす。
日産は国内に5工場を持つ。栃木工場(栃木県上三川町)、追浜工場(神奈川県横須賀市)、日産車体湘南工場(神奈川県平塚市)のほか、いずれも福岡県苅田町にある日産自動車九州と日産車体九州の工場。
横浜市の本社で記者会見したイバン・エスピノーサ社長は、新たな合理化策について「業績改善をより迅速に進め、販売(台数)に頼らず収益を確保できる体質にならなければいけない」と述べた。2万人の人員削減は「日産の存続のために必須の対策だ」と強調した。
25年3月期の売上高は0・4%減の12兆6332億円。世界販売は2・8%減の334万6千台だった。日産は4月に純損益の赤字額が過去最大になると見通したが、精査した結果、縮小したという。
26年3月期の利益予想は見送った。トランプ米政権の関税引き上げなどに伴い、合理的に算定することが困難なためという。
【日産自動車の生産体制】主力市場の日本と米国、中国に加え、欧州など世界各地に自動車や部品の生産拠点を持つ。カルロス・ゴーン元会長の拡大路線からの転換を掲げ、700万台規模まで膨らんだ生産能力を2020年以降縮小してきた。競争力低下で米中の販売が苦戦する中、26年度までに400万台と現状より2割削る計画。インドとアルゼンチンで生産撤退を決めたが、一段の削減が必要との見方がある。
◆―― 2万人削減、存続に必須 閉鎖7工場は明かさず
日産自動車のイバン・エスピノーサ社長の記者会見での主なやりとりは次の通り。
「業績改善をより迅速に進め、販売(台数)に頼らず収益を確保できる体質にならなければいけない」
―2万人の人員削減は国内も含まれるか。
「国内も入っている。残念ながら、日産の存続のために必須の対策だ」
―閉鎖する7工場の詳細は。
「候補は挙げているが、現時点では申し上げられない。国内を含めグローバル全体で評価する」
―新たな再建計画をこのタイミングで発表した理由は。
「新経営陣として従来の計画を精査した結果、より多くのことをやらなければならないと判断した」
―さらなる人員削減の可能性は。
「今回の計画で十分だと確信を持っている。今後は実行に集中する」
―ホンダなどとの協業をどう進めていくか。
「ホンダとは電動化や知能化の分野の他に、米国市場でも協業の可能性を検討している。企業価値が向上するのであれば、複数のパートナーと協業する可能性がある」