金融政策決定会合後、記者会見する日銀の植田総裁=19日午後、日銀本店
◆―― 長期金利上昇2%超
日銀は19日、金融政策決定会合を開き、景気や物価を調節する政策金利を現行の0・5%程度から0・75%程度に引き上げることを決めた。1995年9月以来30年ぶりの高水準で、物価高に対応する。植田和男総裁は記者会見で、経済や物価が想定通り推移すれば「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」と発言し、利上げを継続する方針を示した。国債市場では長期金利が上昇、終値は2・020%と26年10カ月ぶりの水準になった。
利上げは1月以来、今年2回目。9人の政策委員全員が賛成した。植田氏は物価が想定通り上昇すれば、今後も「適切なタイミングで利上げが見えてくるということは十分あり得る」と述べた。
長期金利上昇は日銀の利上げのほか、補正予算の膨張といった政府方針も影響したとみられる。植田氏は、通常と異なる例外的な動きをした場合は「機動的に対応する」とし、金利を抑制する効果がある国債買い入れの増額も視野に入れる。
植田氏の会見後、外国為替市場では円売りが進んだ。利上げは円高要因とされるが、市場はまだ金利水準が低いと判断した可能性がある。
利上げで企業は借り入れの負担が増すほか、変動金利型住宅ローンの返済額は増えることになる。日銀は利上げが経済や国民生活へ及ぼす悪影響も慎重に見極める。
日銀は利上げを決めた理由について、米国の高関税政策を巡る不確実性が「低下している」とし、国内企業の収益は高い水準が見込めるとの認識を示した。その上で来年の春闘で「しっかりとした賃上げが実施される可能性が高い」とした。
植田氏は、利上げ後も金利水準は極めて低いとして「緩和的な金融環境は維持される」と強調。景気を熱しも冷ましもしない水準とされる中立金利までは「まだ少し距離がある」と延べ、利上げ余地があるとの認識を示した。
◆―― 日本経済に重い責任
【解説】日銀が政策金利を30年ぶりの水準に引き上げた。過去には利上げが不況の引き金となり、日銀の失策とされたこともある。景気の腰折れを防ぎつつ、物価高も同時に抑える政策運営は可能なのか。日銀の判断は日本経済に重い責任を持つことになる。
日銀は0・75%程度の金利は依然低く、緩和的な金融環境が維持され景気を冷やすことにはならないと判断した。ただ、日本が四半世紀以上経験していない金利水準に経済や物価がどう反応するかは不透明だ。
歴史を振り返ると、バブル経済崩壊前に急激な利上げを実施し、ITバブル崩壊直前の2000年や世界的な金融危機リーマン・ショック前年にも金利を引き上げた。「失敗」との評価がつきまとい、日銀の金融政策がデフレ長期化を招いたとの不信を生んだ。
日銀はこれまでの利上げの影響は限定的だと見ているが、物価高や人手不足に悩む中小企業が多いのも事実だ。倒産件数は高い水準で推移しており、利上げが設備投資や資金繰りに悪影響を及ぼせば、さらなる苦境に陥りかねない。
家計にとっては、住宅や自動車購入、教育資金のローンの利息支払いが増加すれば生活を圧迫する。次の利上げを模索する日銀の政策運営は綱渡りが続く。





























































