
パレスチナの国家承認を表明するスターマー英首相(スターマー氏のXより、共同)
◆―― ガザ侵攻イスラエルに圧力
【ロンドン共同】英国とカナダ、オーストラリアは21日、パレスチナを国家承認したとそれぞれ発表した。英国とカナダの承認は先進7カ国(G7)で初めて。同日にポルトガルも承認を発表。フランスも22日に承認する意向だ。パレスチナ自治区ガザで飢餓や栄養失調による死者が後を絶たない中、地上侵攻を強めるイスラエルに一斉に圧力を強化した。
22日は米ニューヨークの国連本部でパレスチナ問題解決に向けた国際会議が開かれる。
G7ではイスラエルの後ろ盾の米国が承認に否定的な立場。日本はイスラエルの態度硬化につながるとして承認見送りの方針を表明した。ドイツも、ナチス時代のホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の加害責任からイスラエル寄りの立場で、慎重姿勢を貫いている。
英政府は21日の声明で「歴史的な決定だ」と表明。スターマー首相はビデオ演説で「(パレスチナとイスラエルの)『2国家共存』への希望は薄れつつあるが、光を絶やしてはいけない」と述べた。
イスラム組織ハマスについて「残忍なテロ組織だ」と非難し、パレスチナ統治は認めないと宣言。パレスチナ自治政府との外交関係構築に向けた手続きを進める。
カナダのカーニー首相は「2国家の平和的共存の実現に協力する」との声明を発表。オーストラリア政府は2国家共存が「永続的な平和と安全に向けた唯一の道だ」と説明した。
パレスチナ自治政府は歓迎。イスラエルのネタニヤフ首相は「国の中心部に『テロ国家』を築こうとする試みだ」と反発した。
世界では約150カ国がパレスチナを国家として承認。9月の国連総会に合わせ、ガザでの停戦実現や人道状況の改善に向けた動きが活発化した。承認は象徴的な意味合いが大きく、ガザ情勢の早急な改善は期待できないとみられる。
◆―― 中東諸国とガザ情勢協議へ トランプ氏、NYで開催
【ニューヨーク共同】米ニュースサイト、アクシオスは21日、トランプ大統領がニューヨークでの国連総会出席に合わせ、23日にパレスチナ自治区ガザ情勢を巡って中東諸国の首脳らと会合を開く計画だと報じた。米側はサウジアラビアやカタール、エジプト、トルコなどに参加を打診しているという。
トランプ氏はガザの戦後計画に関し、イスラエル軍に代わって治安維持を担う部隊への兵士派遣を要求。中東諸国はトランプ氏に対し、戦闘終結のほか、イスラエルの占領地ヨルダン川西岸での入植拡大をやめることをイスラエルのネタニヤフ首相に要請するよう求める見通し。
パレスチナを国家承認する動きが各国で広がる中、イスラエルでは報復として入植を拡大する動きが出ている。
また、トランプ氏はこの会合とは別に、湾岸諸国との会合も実施する見込み。パレスチナのイスラム組織ハマス幹部を狙ったイスラエル軍のカタール空爆について協議し、湾岸諸国側は同様の攻撃が二度と起きないよう保証を求める。
◆―― 官房長官「重大な関心」
林芳正官房長官は22日の記者会見で、英国とカナダ、オーストラリア、ポルトガルがパレスチナを国家承認したと発表したことに関し、今後の情勢変化を注視する考えを示した。日本政府による承認を巡っては「いつ承認するかの問題だ。重大な関心を持ち総合的に検討する」と述べた。
パレスチナが持続可能な形で存在し、イスラエルと共存することが最も重要だと強調した上で「現実的かつ積極的な役割を果たし続ける」と語った。