
9日、カタールの首都ドーハでイスラエル軍の攻撃の瞬間を捉えた監視カメラ映像(ゲッティ=共同)
◆―― トランプ氏「非常に不満」 停戦交渉、一層不透明に
【カイロ、ワシントン共同】イスラエル軍は9日、カタールの首都ドーハでイスラム組織ハマス幹部らを狙った空爆を実施した。ハマスによると、パレスチナ自治区ガザの停戦交渉で交渉団トップを務めるハイヤ氏の息子らメンバー5人が死亡した。米国が新たに提示した停戦案を協議中で、ハイヤ氏本人は生存していると主張している。ほかにカタール治安部隊要員1人も犠牲になった。
カタールは米国の同盟国で、ガザ停戦交渉の仲介国。トランプ米大統領は空爆がドーハで実施されたことに「非常に不満だ」と記者団に表明した。ドーハにはハマス政治部門の拠点があり、ハマスの態度硬化は避けられず、停戦交渉の先行きは一層不透明になった。
イスラエルのネタニヤフ首相は9日の演説で、ガザでの「戦闘終結につながる」と正当化。カタールは「国際法違反の犯罪行為だ」と反発した。
国連安全保障理事会は9日、空爆について協議する緊急会合を10日午後(日本時間11日未明)に開くと決めた。
トランプ氏は交流サイト(SNS)に、ネタニヤフ氏の決定で「私の判断ではない」と投稿した。米軍を通じて事前に把握し、カタールに連絡したが、攻撃を防ぐには「遅すぎた」と説明した。
レビット米大統領報道官は記者会見でイスラエルからの事前通知の有無について回答を避けた。
カタール外務省報道官によると、ハマスのメンバーが居住する建物が攻撃を受けた。イスラエルメディアはハマス幹部らが集まっていたと伝えた。
ネタニヤフ氏はエルサレムで8日に6人が死亡した銃撃テロ事件などを受け作戦を承認したと主張。「イスラエル独自の作戦だ」とし「全責任はイスラエルが負う」と訴えた。事件ではハマスが犯行声明を出していた。
トランプ政権はガザ停戦を巡る新たな提案をハマスに示し、トランプ氏はハマスが受け入れなければ相応の結果が訪れると警告していた。空爆後、トランプ氏はネタニヤフ氏と電話会談し、カタール首脳とも協議した。
イスラエルメディアによると、軍は数カ月前からカタールに滞在するハマス幹部への攻撃を計画していた。
◆―― 「一線越えた」市民怒り 停戦仲介カタールで爆発
【イスタンブール共同】カタールの首都ドーハの住宅街に突然、複数回の爆発音がとどろいた。イスラエル軍によるイスラム組織ハマス幹部を標的にした9日の攻撃。カタールはパレスチナ自治区ガザの停戦を巡り、イスラエルとハマスの仲介を続けてきた。「イスラエルはあらゆる一線を越えている」。ドーハ市民が怒りで声を震わせた。
「大きな爆発音が連続して聞こえた。最初は雷かと思った」。攻撃現場から約10キロ離れた場所にいたムハンマド・バシルさん(38)が電話取材に振り返った。現場に近づこうとしたが、治安部隊に阻止されたという。
中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、壁に囲まれたハマスの関連施設とみられる広大な建物の一部は黒焦げになり、黒煙が立ち上っていた。現場近くにはフィリピンやイラクなど各国大使館のほか、複数の学校や給油所もある。
30代女性は現場から約7キロ離れた自宅の窓が爆風で揺れたと語った。「カタールはガザの危機を解決しようとしている。イスラエルが平和を望んでいないのは明らかだ」と非難した。
ガザで戦闘が始まった2023年10月以降、イスラエル軍はイランやレバノン、シリアなどを相次いで攻撃してきた。バシルさんは「イスラエルの主権侵害に憤っている。アラブ諸国が団結しなければ攻撃は別の国にも波及する」と危惧した。