
相嶋静夫さんの墓前で謝罪する警視庁の鎌田徹郎副総監。奥の2人は相嶋さんの息子=25日午前、横浜市の霊園(代表撮影、画像の一部を加工しています)
◆―― 墓前にも 妻「許すことはできない」
機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の冤罪事件を巡り、警視庁の鎌田徹郎副総監と最高検の小池隆公安部長、東京地検の市川宏次席検事が25日、横浜市の霊園を訪れ、保釈が認められず被告の立場のまま72歳で亡くなった同社元顧問・相嶋静夫さんの墓前で謝罪した。相嶋さんの妻や息子らにも面会し、鎌田副総監は「違法な捜査、逮捕を行ったことをおわび申し上げます」と述べた。
市川次席検事は「保釈請求への不当な対応で、治療の機会を損失させた」と陳謝した。相嶋さんの妻は「謝罪は受け入れるが、許すことはできません」と語った。
遺族は、今月警視庁などが検証結果を公表したことを受け、謝罪を受ける意向を固めたという。警察・検察は、冤罪を生まない組織づくりなど、再発防止に向けた取り組みが問われる。
相嶋さんの息子らは検証結果について「都合の悪い事実に触れていない。第三者の関与がなく、信頼できない」として、再検証を求めた。
6月には鎌田副総監と東京地検の森博英公安部長(当時)らが同社を訪れ、相嶋さんと共に逮捕・起訴された大川原正明社長(76)や元取締役・島田順司さん(72)らに謝罪したが、相嶋さんの遺族は欠席。代理人弁護士が「今の状況では謝罪を受けられない」との遺族の書面を手渡していた。
警視庁公安部は2020年、軍事転用可能な装置を無許可輸出したとして外為法違反容疑で3人を逮捕。地検は起訴した。相嶋さんは勾留中に胃がんが見つかり、治療のため勾留が停止されたが、保釈されないまま21年2月に死去した。保釈請求は8回にわたったが、検察官はその都度反対した。地検は7月、疑義が生じたとして大川原社長らの起訴を取り消した。
警視庁は今月7日、公安部の捜査指揮系統の機能不全が違法な逮捕につながったとする検証結果を公表。捜査方針を軌道修正すべきだった当時の公安部長ら退職者を含む19人の処分内容などを明らかにした。最高検も検証結果を公表し、保釈請求に柔軟に対応すべきだったなどとした。
【大川原化工機冤罪事件】警視庁公安部は2020年、大川原化工機が輸出した装置が軍事転用可能で輸出規制対象に当たると判断し、外為法違反容疑で社長や元顧問ら3人を逮捕した。元顧問は胃がん治療で勾留停止後、21年2月に死亡。同7月、疑義が生じたとして起訴が取り消された。同社が東京都と国に損害賠償を求めた訴訟の二審東京高裁判決は、公安部について、不正輸出ではないとの従業員らの主張を聞いていたにもかかわらず追加捜査をしなかったなどと指摘した。東京地検に関しては装置の検証を欠いたと判断し、逮捕・起訴は違法と認定。その後、判決が確定した。