
◆―― 韓国、EUも同水準
【ワシントン共同】トランプ米大統領は7月31日、日本に対する「相互関税」を15%とする大統領令に署名した。8月7日に発動する。米国との交渉の結果、韓国、欧州連合(EU)も日本と同水準となる。いずれも関税率は4月の公表当初の水準からは下がるものの、現行の10%からは引き上げとなる。
トランプ政権は合意内容の実施状況によっては、再度の関税引き上げを排除していない。第2次政権発足前と比べて関税水準が大幅に高くなる中、関税措置を巡る動向には、なお懸念が残る。
8月7日の午前0時1分(日本時間午後1時1分)に発動する。米政権は発動日を1日と説明していた。ホワイトハウス関係者によると、7日に遅れたのは、税関が関税率変更に対応する実務的な理由からだという。発動までは現行の10%を適用する。
林芳正官房長官は1日「輸出などに与える影響を注視する」と述べた。
日米合意によると、日本は米国に出資や融資などを組み合わせて最大5500億ドル(約80兆円)を投じるほか、コメを含めた農産物の輸入を拡大。米国は自動車関税を27・5%から15%に引き下げるが、根拠とする法律が異なるため、適用までに時間がかかる可能性がある。
韓国やEUも日本と同水準の関税措置と引き換えに、米国への投資や市場開放を約束した。EUは、液化天然ガス(LNG)や石油など7500億ドル相当のエネルギー製品を米国から購入する。6千億ドル相当の対米投資も行う。韓国も米国の造船業の再建支援など米国が管理する投資案件に3500億ドルを拠出する。
大統領令によると、約70の国・地域への関税率は10~41%。他の国は一律10%とする。いち早く米国と合意した英国は、10%の一律関税分だけが残る。このほかインドネシア、フィリピン、ベトナムの相互関税は19~20%となった。
ホワイトハウスは、カナダへの関税を8月1日から35%に引き上げると発表した。
【トランプ関税】トランプ米政権が貿易赤字の削減や製造業の国内回帰を目的に輸入品にかける関税。中国やカナダ、メキシコといった国別のほか、鉄鋼、アルミニウム、自動車など品目別の追加関税を相次いで打ち出した。4月には「相互関税」を発動。まず大半の国・地域に一律10%を課し、貿易赤字の大きい相手には上乗せ分を適用した。上乗せ分は直後に一時停止して停止期間に交渉し、日本や韓国などと新たな関税率で合意した。
◆―― 米、強気貿易交渉に自信 「相互関税」新税率発表
【解説】米国が「相互関税」の新たな税率を発表し、トランプ大統領の関税措置は新たな段階に入る。強い購買力を背景に、米政権は高い関税率をちらつかせて譲歩を迫る強気の貿易交渉を押し通した。日本をはじめとする相手側から米製品の輸入拡大などの「成果」をもぎ取り、その手法に自信を強めている。
口火が切られたのは、トランプ氏がホワイトハウスで「相互関税」を発表した4月2日だった。「解放の日」と称し、関税率が並んだ大きなボードを抱え、日本の24%など、次々と数字を読み上げる姿は衝撃を与えた。
その後、各国・地域の交渉担当者が「ワシントン詣で」を繰り返し、関税引き下げを求める交渉は終始米国ペースで進んだ。日本に対してもコメや自動車の受け入れに消極的だと不満を表明。7月初めには日本への関税率が35%になる可能性を示して圧力をかけ、約1週間後には交流サイト(SNS)に25%と投稿した。日本は市場開放や米国への巨額投資をのみ、最終的に15%で決着したが、第2次トランプ政権の発足前よりも関税率は格段に上昇したままだ。
関税交渉はいったん節目を迎えたものの、関税を巡る騒動がこれで終結するとの見方は少ない。米政権は医薬品や半導体といった分野別関税も発動する構えで、各国・地域は長期戦を強いられそうな情勢だ。