
避難する車で混雑する道路=30日午前10時半ごろ、室蘭市八丁平(画像の一部は加工しています)
津波警報が太平洋沿岸に発表されたことを受け、各自治体はサイレンで周知、避難指示を発令した。高台や公共施設などに避難した住民は、不安なひとときを過ごした。2011年の東日本大震災や18年の胆振東部地震などの災害以降、津波から身を守るため高台へ避難する意識が浸透。車や徒歩で慌ただしく避難していた。避難中に登別や白老で60代女性が転倒しけがを負った。伊達では避難途中などに10代と70、80代女性が熱中症の疑いで、室蘭の避難所では高齢女性が過呼吸でそれぞれ救急搬送された。
室蘭では、30日午前9時40分、津波注意報が警報に切り替わる「ウーッ」というサイレンの音がまち中に響き渡った。市はスマートフォンの緊急速報メールなどでも津波浸水想定区域の人に避難を呼びかけた。
市役所本庁舎(幸町)では一時、職員や市民らが最上階の4階に避難したが、間もなく室蘭西中学校(山手町)へ移動した。住民も一斉に市内の高台や20カ所の津波避難ビル、各小中学校の一時避難施設へと向かった。
測量山展望台(清水町)の駐車場には、家族連れらの車両50台余であふれた。会社同僚と避難した60代女性は「携帯電話の警報が鳴り、最初は避難しようか迷っていた。津波到達予想時刻が午前11時で、怖くなり来た」と不安げに話した。
中島町から高台の八丁平の道路でも、避難のため路肩に多数車両が駐車した。
文化センター(幸町)には常盤保育所(石井保子所長)の園児や教諭ら約300人が避難。石井所長は「3階に保育所の運営本部があり、心強く、扇風機や飲み物の援助も助かった」と感謝した。東地区自主防災会は、ラインで避難情報を共有。橋本正敏会長は「津波被害が実際に発生すれば、さらに迅速な対応が必要になる」と話した。
警報発表で市民生活にも影響が出た。西いぶりエコファクトリーでごみの受け入れ停止や、一部地域で資源ごみ収集もストップ。国道や道道の一部も通行止め、公共交通も止まった。
このほか、一部金融機関やコンビニエンスストア、スーパー、ドラッグストアが営業を休止。飲み物を買いに来た60代女性は「万一に備え買いたかったが、自動販売機で購入するしかないかも」と話した。
また医療機関は通常通りの診療体制や休診と対応が分かれた。
登別市幌別地区の避難所の一つ幌別中では、大勢の住民が駆け込んだ。カトリック聖心幼稚園の教諭は「注意報が出て事前に準備ができた」と話した。中央栄町内会の茨目隆会長は姿が見えない町内会の人に電話をしたが、何軒かは不通。「連絡体制を整え、訓練もしたが、現実に起こると難しい」と課題を口にした。
学校側の対応は迅速だった。中島英治校長が現場責任者となり、体育館に椅子や扇風機を設置。不安を口にする避難者に、プロジェクターとスマートフォンをつなぎ、動画サイトでニュース映像を上映。柔道や体操用のマットを敷くなど避難所運営に当たった。
伊達市内では午前中、国道方面に避難する市民らの車両で一時道路が混み合った。カルチャーセンターには続々と避難者が訪れ、駐車場は満車に。山下町の81歳女性は愛犬を連れ出し避難。「油断してはいけないと逃げてきた。とりあえず水と愛犬の物を持ってきました」と話した。