
安倍元首相銃撃事件から3年、現場付近に設置された献花台で手を合わせる人たち=8日午前、奈良市
安倍晋三元首相が奈良市で参院選の応援演説中に銃撃され、死亡した事件から8日で3年となった。再び参院選を迎えた各地では多くの人が手を合わせ、黙とうをささげた。「なぜ命を奪ったのか」。宗教団体への高額献金や政治家との関係など、事件は多くの問題を浮き彫りにした。殺人罪などに問われた被告(44)の裁判員裁判は、10月28日に始まる。
事件は2022年7月8日午前11時半ごろ発生。近鉄大和西大寺駅前の現場には今年も献花台が設置され、多くの花々と共に安倍氏の遺影が置かれた。発生時刻には居合わせた人たちが黙とうした。近くには手荷物検査への協力を呼びかける張り紙も。参院選のポスター掲示板には候補者の顔が並び、各陣営のスタッフがチラシを配ったり選挙カーが走り回ったりしていた。
奈良県五條市の団体職員・山本修二さん(67)は「選挙期間中に起きた事件は民主主義に対する挑戦であり、あってはならないことだ。裁判で事件の背景を明らかにしてほしい」と話した。
山口県長門市では法要が営まれ、妻・昭恵さんが参列。市内で開かれた安倍氏をしのぶ会で、参加者に向けて「主人のことを忘れずに語り継いでほしい」とあいさつした。
関係者によると、被告は母親が多額の献金をした世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に恨みがあったとされ、教団の高額献金問題が改めて社会問題化し、解散命令決定が出た。教団と自民党との接点も次々と明らかになり、安倍派はその後、派閥裏金事件の影響を受けて解散した。
裁判では情状面や手製銃の殺傷能力の程度が中心的に審理される見通しで、被告による動機の説明も焦点。来年1月に判決を言い渡す案を軸に、奈良地裁で審理日程の検討が続いている。