
日本向けの書簡を手に記者会見するレビット米大統領報道官=7日、ホワイトハウス(ロイター=共同)
◆―― 停止期限延長で時間確保 24%から上げ、交渉厳しく
【ワシントン共同】トランプ米大統領は7日、自身の交流サイト(SNS)で石破茂首相に宛てた書簡を公開し「8月1日から米国が輸入するあらゆる日本の製品に25%の関税をかける」と明らかにした。4月発表当初の「相互関税」の24%を1ポイント上回る。相互関税の上乗せ分の停止期限を今月9日から8月1日に延長する大統領令にも署名した。交渉期間を確保しつつ新たな関税率を示すことで、圧力をかけて譲歩を引き出す狙いだ。日本は厳しい交渉が続く。
レビット大統領報道官は「新たな関税率が8月に発動するか、交渉を続ける国々と合意を結ぶかだ」と述べた。トランプ氏は日本以外の13カ国にも25~40%の関税を課すとの書簡をSNSで公表した。
日本への書簡の中で、米国が抱える巨額の貿易赤字を問題視し、日本の関税や貿易障壁を是正するために必要な措置だと正当化した。自動車や鉄鋼など分野別関税を課す品目は別だと説明した。
トランプ氏は、日米の関係は「残念ながら全く相互的ではない」と非難。日本企業が米国でモノをつくれば関税はゼロだとも主張し、米国への投資を改めて要求した。
日本が市場を開放したり、非関税障壁を撤廃したりすれば、関税率を変更する可能性があるとも記した。一方、日本が対抗措置に踏み切れば、関税を上乗せするとも強調した。
米政権は4月5日に、ほぼ全ての国・地域に一律10%の関税を課した。同9日には貿易赤字の大きさに応じて相手ごとに異なる上乗せ分を課したが、直後に7月9日まで90日間停止した。
日本に一時適用された上乗せ分を含んだ相互関税は24%。日本は関税撤廃を求めて協議を重ねてきたが成果は上がらず、新たな関税率はさらに1%分上乗せとなる。韓国は当初の25%から変わらず、ミャンマーは44%から40%に下がる。書簡の言葉遣いは各国とも類似し、トランプ氏がどのように新たな関税率を決定したかは判然としない。
【日米の経済関係】日本にとって、米国は中国に次ぐ貿易相手国。日本は主に自動車や自動車部品を輸出し、米国から医薬品やエネルギー関連物資などを輸入している。米商務省によると、米国は2024年、モノの対日貿易赤字が696億ドル(約10兆円)となり、欧州連合(EU)を除く国・地域別では台湾に続き7番目に赤字額が大きかった。
◆―― 高関税発動より交渉優先
【解説】トランプ米政権が「相互関税」の上乗せ分の停止期限を8月1日まで延長したのは、予定通り7月9日に高関税を復活させるより、交渉を通じて有利な貿易条件を引き出すことを優先したためだ。4月に上乗せ分を発動した際に生じた金融市場の混乱を警戒し、同様の事態を回避したい思惑も透けて見える。
トランプ政権はこれまで成立した2カ国との合意で、いずれも相手国の市場開放を成果として強調してきた。英国とは米国の牛肉やエタノールなどの輸出に関し、数十億ドル(数千億円)規模の市場アクセス拡大が含まれると言及。ベトナムに対しては「米製品を無関税で売ることができるようになる」と主張した。
トランプ大統領は6月下旬以降、自動車やコメの日本の輸入が少ないと訴えるなど、対日交渉で態度を硬化させている。迅速に合意できるとの目算に反し、交渉が難航しているためとの見方がある。7月7日に通知した関税率について、4月発表の相互関税率から税率を引き下げた国が多い中、日本は1ポイントながらも引き上げたのは、不満の表れとみられる。
関税強化などで4月に大きく下げた米国の株式相場はこの日、米経済への悪影響懸念で売られた。米国が強硬姿勢を鮮明にすれば、先行き警戒から再び売り圧力が強まる可能性がある。