
◆―― 基礎底上げ、付則に明記 審議1カ月「拙速」批判
年金制度改革法が13日の参院本会議で可決、成立した。パートら短時間労働者の厚生年金加入を拡大するため、年収要件(106万円以上)を撤廃する。働く時間を抑えて保険料負担を避ける「106万円の壁」とされていた。将来受け取る年金額が手厚くなる半面、保険料負担で手取りが減るケースもある。付則には、全ての国民が受け取る基礎年金(国民年金)の将来的な底上げを明記した。
底上げは、就職氷河期世代や若者が低年金に陥るのを防ぐ一環。夏の参院選での争点化を懸念した自民党内で異論が噴出、意見集約が難航し、法案の国会提出が当初の予定より2カ月遅れた。国会審議は1カ月足らずで、日本維新の会や国民民主党などは「拙速だ」と批判していた。
年収要件は3年以内に撤廃。企業規模要件(従業員数51人以上)は2027年10月から段階的に引き下げ、35年10月になくす。計180万人の新規加入を見込む。「週の労働時間が20時間以上」などの要件は維持する。
手取り減対策として、労使で折半している保険料のうち、従業員が支払う分の一部を企業が肩代わりできる仕組みを3年間の特例で導入。肩代わりした分は保険財政から全額を還付する。
基礎年金は、29年の「財政検証」で給付水準の低下が見込まれた場合に底上げする。厚生年金の積立金を活用する。基礎年金の半分を賄う国費が将来、最大年2兆円規模で必要となるが、確保策は決まっていない。
積立金活用を「流用」とする自民内の反発を受け、政府は底上げを法案に盛り込むのを見送った。立憲民主党が明記するよう修正を要求し自民、公明両党が受け入れた。
このほか、働く高齢者への給付を拡充。高所得の会社員が払う保険料を引き上げる。遺族厚生年金の男女差を是正する。
【年金制度改革】社会や経済の変化に対応するため、おおむね5年に1度行っている。厚生労働省が公的年金の長期的な給付水準を試算した「財政検証」の結果を参考にする。今回の改革は2024年の検証結果に基づき政府がまとめた。