
記者会見するispaceの袴田武史最高経営責任者(中央)ら=6日午前、東京都千代田区
◆―― 2度目、減速できず衝突か
宇宙企業ispace(東京)は6日、着陸船「レジリエンス(再起)」が月面着陸に失敗したと明らかにした。午前4時過ぎの着陸に向け、上空100キロの周回軌道から降下を試みたが、十分に減速できず、月面に衝突したとみている。2023年4月に試みた民間として世界初の着陸は失敗し、その後に米企業が成功。今回はアジアの民間企業として初の着陸を目指したが果たせなかった。
記者会見で結果を報告した袴田武史最高経営責任者は「残念だし、支援してくれた方に申し訳ない」と述べた。原因分析に努め、27年に新たな着陸船で予定する次の挑戦に臨むと表明した。
着陸船は高さ約2・3メートル、幅約2・6メートル。同社の小型探査車や他企業の実験装置などを積み、今年1月に米フロリダ州からスペースXのロケットで出発し、5月に月の周回軌道に入った。
6月6日は午前3時過ぎに降下を開始。自動制御でエンジンを月面に向けて噴射し、時速5800キロから時速2キロ程度まで減速、月の北半球の目標地点に降りるはずだった。だが想定より降下スピードが速いまま、高度192メートルを最後にデータが途絶えた。高度センサーの不具合が疑われる。
ispaceの挑戦は、グーグルがスポンサーとなった月探査の国際賞金レースに10年から参加した「HAKUTO」チームから続く。23年に着陸を試みた際は機体の高度センサーと飛行システムの連携がうまくいかず、上空で静止したままとなり、燃料切れで落下した。民間初の月面着陸は米インテュイティブ・マシンズが24年2月に成功させている。
【レジリエンス】宇宙企業ispaceが開発した2番目の月着陸船。英語表記の「RESILIENCE」は立ち直る力を意味し、最初の着陸に失敗した経験を生かして再挑戦する決意を込めた。今年1月15日に米国から打ち上げられた。機体は着陸用の脚を展開した状態で高さ約2・3メートル、幅約2・6メートル。燃料抜きの重さは約340キロ。同社の小型探査車のほか、高砂熱学工業の水電解装置、ユーグレナの藻類培養装置などを搭載した。