
来年のミラノ・コルティナ五輪シーズン限りでの現役引退を表明したスノーボードの竹内智香=29日、東京都千代田区
スノーボード女子パラレル大回転で、2014年ソチ冬季五輪銀メダリストの竹内智香(41)=広島ガス=が29日、東京都内で記者会見し、来年のミラノ・コルティナ五輪シーズン限りでの現役引退を表明した。
日本女子最多となる五輪6大会連続出場中の第一人者は、既に全日本スキー連盟(SAJ)が定める来年の五輪への派遣基準を満たしており「残りシーズン、もう一回本気で勝ちにいきたい」と完全燃焼を誓った。
ソチ大会後から引退について迷っていたが、ここ数年は腰痛を抱え、昨夏は歩くのも厳しい状態だったといい「そろそろ退く時が来ているかなと思った」と説明。「楽しさは全く変わりがないが、痛みやけがと付き合うことに正直、少し疲れてきた部分もある」と語った。引退後も「スポーツやスノーボードには携わっていきたい」と話した。
旭川市出身の竹内は、クラーク高時代の02年ソルトレークシティー大会で五輪初出場。07年に活動拠点をスイスに移すなどして成長を遂げた。18年平昌大会後は約2年半、競技を離れたが、復帰して出場した直近の22年北京大会は15位だった。
竹内智香(たけうち・ともか) 冬季五輪に02年ソルトレークシティーから6大会連続で出場。14年ソチ大会の女子パラレル大回転で銀メダルを獲得した。世界選手権にも12度出場し、15年大会で3位。ワールドカップ(W杯)のパラレル大回転はこれまで通算143試合に出場し、優勝1度を含む12度の表彰台。クラーク高出。広島ガス。165センチ。41歳。旭川市出身。
◆―― 競技の枠を超えた先駆者 スイス交流に育成も
スノーボード界にもたらした功績の大きさは計り知れない。竹内は海外で拠点とする「第二の母国」スイスとの交流のほか、後進育成にも取り組むなど競技の枠を超えた先駆者だ。「何かを伝える引き出しが一つでも増えてくれれば、自分の人生の財産にもなる」との思いを胸に、活動の幅を広げてきた。
2006年トリノ五輪後に単身でスイスに渡る決断を下した。同国のチームと長年鍛錬。今では、スイス名誉領事を務める関係性を築いた。
18年平昌五輪後は一時競技を離れた。復帰した20年に、現役続行と将来の妊娠の可能性を残すため、卵子を凍結保存したと公表。賛否はありつつ「議論される場が多くなったのであればうれしい」。働く女性の選択肢が広がる契機にもなった。
育成組織「&tomoka」も立ち上げており、引退後はさらに普及活動に力を入れる意向。「簡単ではないのはよく分かっているが、いつかワールドカップ(W杯)の日本開催を実現できたら」と夢を抱く。「競技は退くけど生涯現役は変わらない」とスノーボード愛を貫き、最後のシーズンに向かう。